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今回は、パキスタンのゴジャール地方(アッパーフンザ)のパスー村で、イスマイリー派の教えを子供たちに教えている先生で、9ヶ月になる女の子のお母さんでもあるタイラーさん(24)にインタビューしました。
インタビューアーは中島とみ子です。

タイラーさんと娘さん(顔に塗っているのは日よけのため)
タイラーさんが暮らすパスー村について、はじめに紹介しておきます。
パスー村は、6000メートル級の高い山にまわりを囲まれた、標高2400メートルの村です。すぐ近くにパスー氷河がせまり(左下写真)、氷河から流れ出た水は岩の上を川になってフンザ川に流れ込み、また、村中に張り巡らされた水路を流れ、穀物を育てます。山も川もブルーに輝き、たとえようのない美しい風景をつくりだしていました。右下の写真のギザギザの山は、トポップダンと名づけられているようですが、日本ではクイーンズティアラと呼ばれてもいます。
 
カラコルム・ハイウエイ(左上写真)とフンザ川(右上写真)に挟まれたパスー村には、約110世帯が暮らしています。多くの人が放牧と畑仕事を生業とし、村中いたるところ、境界線・道路の縁・家畜小屋などにリーズ(石積み)が見られます。

村のリンクロードで出会う人たちは、老人から子供たちまで、笑顔でハローと握手を交わします。タイラーさんに会ったのも、リンクロードを歩いている時でした。イスラマバードなどではベールで顔を覆う女性を多く見ましたが、パスー村では、1人も見ませんでした。
 

タイラーさんにインタビューを申し込みました。タイラーさん一家は、ちょうどニューパスーの家に行っていたので、そのそばのリンゴ畑の木陰でお話を伺いました。
パスー村からニューパスー村へは、車で約15分ですが、歩くと1時間ちょっとかかります。タイラーさんは夫の家族(ご主人は現在カラチに行っています)と一緒にパスー村に住んでいますが、ニューパスー村のリンゴの手入れや畑の作業をする時は、家族全員で泊まりがけで出かけるのだそうです。
タイラーさんは、グルキン村のDJスクールを卒業後、グルミット町のハイスクールへ。そして18才から20才まで、スカーラーとしてカラチのカレッジで先生になるためのトレーニングをうけたそうです。
あなたがカラチのカレッジに行く時、家族はなんといいましたか?と尋ねると、
‘カラチでもっと勉強するようにといってくれた’という答えが返ってきました。
この地域で女性が先生になることは大変なことですか?と聞くと、
‘グルキンに住んでいるお父さんはリタイアーして、今はドライバーをしているが、先生になることについては賛成。家事、放牧、畑仕事、刺繍などをしているお母さんも賛成してくれた’ということでした。彼女は兄2人、姉3人の6人兄姉の6番目(一番下)で、親戚で先生をしている人が3人いるそうです。

タイラーさんは21才で結婚しましたが、結婚と先生の仕事の両立について伺ったところ、‘何も問題はない’という返事。教えている間の子どもの世話はどうしているのですか?と重ねて問うと、‘家族が見ている’といいます。
彼女の家族とは、義理のお父さん、義理のお母さん、義理の妹二人。インタビューの間、そばでタイラーさんの娘さんを抱いていた義理のお父さんに、‘お父さんは、タイラーさんが先生をしていることについてどう思いますか?’と尋ねると、‘先生をしていることも勉強をすることもいいことだと思う’と嬉しそうに答えてくれました。
 
夏の休みが終わった9月1日、タイラーさんの姿はパスー村コミュニティセンターの2階に、たくさんの子供たちと共にありました。タイラーさんは、コミュニティセンターで、DJスクールが終わった後、イスマイリー派の教えを子供たちに教えています。フンザ地区では、ほとんどの人がイスマイリー派です。
 
将来、子どもたちには、どんな大人になってほしいですか?と聞くと、‘男の子は、ドクター・エンジニアなどの技術を持った大人になって欲しいと思います’と答えてくれました。今、パキスタンでは、男の子はドクター・エンジニア、女の子は看護士・先生が人気のある職業のようです。

今一番楽しいことは?‘娘といるとき’
あなたの幸せは?‘旦那さんと会っているとき’と答える彼女。
最後に、あなたの将来の夢は何ですか?と尋ねると、‘大学に行って勉強すること’と思いがけない答えが返ってきました。タイラーさんは、今年の12月にカラチのユニバーシティの入試を受ける予定だそうです。パキスタンでは、カレッジ2年間を終えた後に、ユニバーシティに入ることができます。

タイラーさんへのインタビューは、私が、それまで抱いていたイスラム圏の女性に対するイメージ(人前で顔を出せず、社会進出を阻まれている女性)を一新させるものでした。まっすぐ前を見つめるタイラーさんの真摯なまなざしに、イスラム圏の女性の明日を見たように思いました。
(2007/9/14)

(Hospitality & Tourism Guide of Northern Areas Pakistan より)

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