「何かお手伝いをしましょうか」とキッチンに入った私に、パンさんは 「じゃ、ニンジンを切って!」と、1本のニンジンと小型ナイフとを手渡してくれました。
そして、パンさんは、ニンジンを左手に持ち、右手に持ったナイフを手前に引くようにと切り方を教えてくれました。
私は、主婦としてずっと料理を作ってきました。そして、自分では、手先が器用で料理も得意な方だと思っていました。ところが、まな板と菜切り包丁で料理をしてきた私にとって、小型ナイフは使い勝手が違いました。
隣で見ていたパンさんに「危なっかしくて見てられないから、とみ子はしなくていいよ!」
とナイフを取り上げられてしまいました。
このときから、私の手伝いは、夕食後の食器洗だけになりました。
さて、その食器洗いですが、まず、洗い桶に液体洗剤をいれ、熱めのお湯を注ぎ、十分泡立てて、その中で食器を洗います。
ここまでは、私の家と変わりませんが、この後が違いました。
食器は、洗剤の泡のついたまま水切りに立てかけられ、そのままティータオルでふかれ、食器棚にしまわれるのです。
日本では、洗剤は、数秒以上流水で洗い流すことが常識ですが、
「イギリスでは、洗剤は洗い流さない」のです。
洗剤を洗い流さないでふきあげたお皿やティカップは、ツヤツヤと輝いていました。
* * *
私が、食器洗いを手伝うたびに、ホストファーザーのデリックは、「僕の仕事がへってとても楽になったよ。ありがとう」と言ってくれました。
そして、洗い終わってリビングでくつろぐ私とパンさんに、デリックは、毎日、紅茶を運んできてくれました。
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