コリンさんが英語学校として使っている建物には、90歳になるコリンさんの両親、オリーブさんとフランクさんが住んでいます。昼間はいろいろな国から来た生徒たちが出入りし、とてもにぎやかです。 バックガーデンは、道路と線路で区切られた三角形をしています。 私が訪れた夏には、授業の間のブレイクタイムにコーヒーやサンドイッチを持って庭に集まり、まるでパーティ会場のようでした。天気がいい日はバックガーデンが教室になってしまうこともあるとか。 道具をしまう小屋の他に、植物を育てる温室(グリーンハウス)があり、オリーブさんの好きな草花が大切に育てられていました。
ケンブリッジに住むノビーさんのお宅に招待された私たちは、道路に面したフロントガーデンを眺めながら、玄関をノックしました。 私たちが案内されたのは、玄関を抜け、息子さんが机に向かっている部屋を「ハロー」と挨拶をしながら通り、そしてキッチン抜けたところのバックガーデンでした。 すでにテーブルがセットされ、バーベキューの準備がしてありました。まるごと一尾の大きな鮭や野菜。 バーベキューを楽しんでいると、蜂が飛んできました。気がつくと、庭の奥の木に咲いている小さな白い花のまわりを、たくさんの蜂が飛び回っていました。 「今年は、蜂が多くてね、」とノビーさん。 「この蜂は刺されても大丈夫なミツバチですよね」と私。 「いや、わからないよ」とノビーさん。 息子さんも奥さんもいっこうに気にする様子もないので、 ま、いいか!と、鮭のバーベキューをほおばりました。 蜂は、私たちの周りを飛んでいましたが、刺すことはありませんでした。バックガーデンでは、自然と人間が共存しているのかもしれないと思いました。 楽しいひとときを過ごし、おいとまする時には、再びキッチンから息子さんの部屋を通り抜けて玄関へ。プライベートスペースを通らないとバックガーデンへ行けないことが不思議でした。
エリスさんは、ご主人と4歳の男の子の3人で、自然に囲まれたバークシャー郊外に住んでいます。ご主人の趣味を凝らした1戸建てにも、フロントガーデンとバックガーデンがありました。フロントガーデンには、車の駐車スペースがありました。 玄関から招き入れられた私達は、リビングを抜けダイニングを通ってバックガーデンへ案内されました。バックガーデンはとても広く、家に近いところはレンガ造りの花壇や芝生などがきれいにガーデニングされていました。そのさきに広々とした緑の芝生、さらにその奥には畑が続いていました。 庭の右側は木々が植えられ、外からは見えないようになっていましたが、左側はところどころに大きな木が生えているだけで塀はありませんでした。 「広いですね」というと、 「左隣のおばあちゃんが、もう庭の手入れができないからあげるというので、もらったの」とエリスさん。 「えっ!タダでですか?」と私は思わず聞き返しました。 少し離れたところに、お隣のおばあさんが住むという家が見えました。
大きな木製のテーブルとベンチ(ご主人お手製だそうです)で、私たちは紅茶をいただきました。しばらくおしゃべりしたあと、一緒に庭を歩きました。サッカーボールを持って私たちの後をついてきた4歳の息子さんは、ボール遊びを始めました。 奥の畑では、豆が実をつけていました。 「この畑の世話は誰がするのですか?」とたずねると、 「わたしのたのしみよ。」とエリスさんは答えました。 そして、「この豆はおいしいのよ。」「トマトもおいしいのが採れたのだけれど、もうおわりね。」と、作物をいつくしむように見回っていました。 振り返ると、広いバックガーデンで、父と子がサッカーゲームをしていました。 エリスさんの家のバックガーデンは、リビングでお茶をするように使ったり、子供たちにとっては遊び場であったりと、家族が思い思いに楽しく過ごせる多目的スペースのようでした。
パンさん、コリンさん、ノビーさん、エリスさん、いずれにも共通していたのは、バックガーデンが、まるでもうひとつの部屋のように使われていたことでした。 道路に面したフロントガーデンは、外から見られる“パブリックスペース”、それに対してバックガーデンは“プライベートスペース”です。そのことは、バックガーデンへの出口が、キッチンやダイニングにあること、また、バックガーデンが道路からは見えないようになっていることなどから感じました。 そして、私は、イギリスの人にとってのバックガーデンが、外の人に見せるためのものではなく、生活する場、安らぎの場になっていること、そして、日々の生活を豊かにするために大切なものであることを実感したのでした。(tomika)