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ツキノワ夫婦が体験したイギリスの食。二人のごはんライフにどんな変化が?

記事一覧
1. ほんとはおいしいイギリスの食
2. マーガレットさん家の一週間の献立表
3. ワンプレートはじめてみます
4. まぜて食べる。




 1 ほんとはおいしいイギリスの食
 2006年7月1日 (土)
 
 

「イギリスって料理がおいしくないんでしょ?」
イギリスの話をすると、よく言われる言葉です。


ふだんから私たちツキノワ夫婦は、生活の中で‘食’のことをとても大切にしています。
夏になれば、ウニー!と言って車を4時間ぐらい走らせて、三陸の市場まで旬のウニを食べにいったりします。
名物の食べ歩きはもちろん、地元の人が足を運ぶ食堂やローカルスーパーをめぐってメニューや食材をなが
めるのも好きです。
家でのごはんは、スーパーで買ったソーセージを食べるだけでも、ドイツビールとドイツ民謡のBGMを揃えて、ドイツのビアホール気分を演出したりします。
とにかく好奇心の赴くまま、いろんなバリエーションで‘食’と向き合っていたのです。


    
そんなツキノワ夫婦。イギリスの‘食’にふれて何を思ったの?
日本に戻ってから、二人の‘食’は何か変わったの?


それが今回の特集。
私たちが感じとったイギリスの‘食’をみなさんに伝えるとともに、気づかないうちに影響を受けていた私たちのようすを綴っていきたいと思います。


私たちがイギリスから帰ってきたのは去年の8月、まだ暑さが残る夏の終わり頃でした。
さっそくイギリスで出会った料理たちを再現しよう!ということで、
大きなスーパーやインターネットで手に入る野菜や食材を探し、
いくつかのイギリス料理にチャレンジしました。



















  
 
  ‘コッテージパイ’

牛ひき肉や野菜をトマトソースで煮込み、マッシュポテトとチーズを上に載せて焼いたもの。
とろけるチーズとじゃがいもに、ジューシーなミートソースをたっぷりからめて。
 
  ‘野菜のハニーロースト’

じゃがいも、ニンジン、紫タマネギ、パプリカをトレイに並べて、ちぎったローズマリーとはちみつをかけてオーブンで焼き上げたもの。はちみつのまろやかな甘さが野菜のおいしさを引き出してくれる料理。
 
  ‘ローストチキン’

鶏の丸焼き。ハーブや野菜を添えて焼き、グレービーソースをかけて食べる。
皮がぱりっとして、モモ肉、胸肉のおいしさがぎゅっとつまっています。
 
  ‘レッドキャベツのバターロースト’

レッドキャベツ、リンゴ、タマネギをバターをのせて焼いたもの。レーズンのあまずっぱさがかくし味です。
 
 
 

ね、おいしそうでしょ?
家族や友達にふるまえば、みんなおいしいおいしい♪といって喜んで食べてくれました。
そう、イギリスの料理はおいしいんです。野菜料理も肉料理も。

こうして最初の頃は、レシピをみながら自分たちで作るイギリスの‘食’に大満足。
作ってみて発見したのは、どの料理もオーブンに入れて焼くという調理スタイルだということ。
これまでは、10分ぐらいでぱぱっと作れるのが手間のかからない料理だと思っていました。でも、イギリスの料理は、オーブンにポンっと材料をいれちゃえばあとはオーブンがおいしく料理を仕上げてくれるという考え方。
1時間ローストが必要だったとしても、その間はキッチンから離れて、本を読んだりテレビを見たり、自分の過ごしたいように時間を使えるのです。
そんなわけで、私たちの‘食’のバリエーションも広がったな〜と、イギリス料理を楽しんでいたんです。

ところが。それから、数ヶ月たって。

気がついたら、あれ !? 最近イギリス料理作ってないじゃない〜!

なぜって。。。。
だって近所のスーパーには、
紫タマネギ、リーク、ブリュッセルスプラウト、紫キャベツ、etc..
イギリスの野菜なんか売っていないし。牛肉なんかもイギリスより高いし。

買い物で手が伸びるのは、日本生まれの親しみのある野菜。安いし、おいしそうだし。。
やっぱり、ふだんの献立は、その土地で安くておいしい食材で作るのが一番よね!と思い、
毎日の‘食’の中に、イギリスのごちそうメニューは思ったほど定着しなかったのです。

日本でイギリス料理の食材をそろえるなんて、現実的じゃないし、ムリムリ〜


と こ ろ が…!
この前すごいことに気がついたんです!

イギリス料理は作ってないけど、気づかないところで、私たちの食生活にはイギリスの‘食’がしっかり影響していたんです。

いったい何が変わったの?

次回はイギリスでホームステイをしたマーガレットさん家の‘食’について綴りたいと思います。

<つづく>

 

 2 マーガレットさん家の一週間の献立表
 2006年7月6日 (木)
 
 

「今日は水曜だから、そろそろサラダDAYじゃない?」
私たちがイギリスで数ヶ月間お世話になっていたマーガレットさん家。
週に一度くらいの割合で、大きなボールにレタスやキューカンバーなどの緑の野菜をいっぱい盛ったサラダが、夕ごはんのメインになる日がありました。それがサラダDAY。
豆やクラッカーなどを添えるのですが、主食がみあたらないし、はじめの頃の私たちには、どうやって食べていいのかわからなかった…。

マーガレットさん夫婦は、ベジタリアン=菜食主義。
ベジタリアンというと、言葉の響きにどこかストイックで厳格なイメージがありませんか?
少なくとも私たちはそんなイメージを持っていました。

しかし、私たちが出会ったマーガレットさん夫婦は、ストイックな感じはまったくなし
ベジタリアンだけど、チキンの胸肉も食べるし、フィッシュフライも食べる。デザートには山盛りのアイスクリームだってOKだし、記念日にはローストビーフも食べます。
無理をしない菜食中心の暮らしがそこにありました。
なにせ、マーガレットさんたちがベジタリアンだということに、私たちは3か月も気づかなかったぐらいだし!

そんなマーガレットさん家で過ごすうちに、私たちにも自然な菜食中心の暮らしがわかってきました。
まず、マーガレットさん家には、一週間の献立のサイクルがあったのです。



















  
 

月曜日
・チキンフライ
・マッシュポテト
・いんげん&エンドウマメ
・ブリュッセルスプラウト

フライは油で揚げずにオーブンでこんがり。野菜はいろんな種類のものをいためたりゆでたりして添えます。

 

火曜日
・豆腐とパプリカのしょうがソイソース炒め
・玄米ごはん
・炒めたキャベツ
・魚のスモーク

「日本の食材は優れたヘルシーフードよ」 仕事で日本に来たこともあって、マーガレットさん家の食卓には、玄米ごはんや豆腐など日本食風のメニューが並ぶことがありました。

 


水曜日
・ボールサラダ
・ビーンズ(ツナ、マメ、紫たまねぎ)
・パンとクラッカーの盛り合わせ
・ショートパスタ
・チェダーチーズ、カッテージチーズなど家にあるチーズ
・サラミ
・オリーブ
・バター

週に一度はサラダの日。ガラス製のサラダボールにたっぷりと新鮮な野菜を用意。ちぎったレタス、薄くスライスしたキューカンバ(キュウリ)、パプリカ、オニオン、コリアンダー。味付けは、オリーブオイルとレモン、ビネガーを混ぜた手作りドレッシング。塩は使いません。

木曜日
・フィッシュソテーまたはフィッシュフライ
・ゆでじゃがいも
・リーク&エンドウマメ炒め

白身魚はたびたび夕食に登場します。フライやバターソテーにして食べます。付け合せの野菜は塩こしょうではなく、ハーブと炒めて香りをつけます。

 
 

金曜日
・鶏胸肉のハニーマスタードロースト
・ゆでパスタ
・ズッキーニとパプリカの炒め

ふだんの食卓にのぼる肉はチキン、必ず胸肉です。ハチミツとマスタードをぬってオーブンで焼きます。ゆでたショートパスタは味付けなしで皿に添えて、野菜やチキンの味といっしょにまぜて食べます。

 

土曜日
・ホウレンソウ&モッツァレラチーズのピザ
・ボールサラダ
・ビーンズ(マメ、オリーブオイル)

家事を減らしてゆっくりしたい週末は、冷凍ピザやソーセージ&チップスなどのラクチンメニュー。でもサラダとビーンズはたいがい添えられていました。

 

日曜日
・ローストチキン
・ローストポテト
・野菜のハニーロースト

お客がいたり、時間があったりする日曜には、マーガレットが腕をふるってロースト料理を作ります。ローストチキンやローストビーフなど、私たちが旅に出るときや帰ってきたときにも振る舞ってくれました。

or
・ソーセージ&チップス


「今日はジャンクフードよ!」とマーガレットさんが言うときは、キッチンから揚げ油の香りがしてきます。イギリス名物でもあるチップス(フライドポテト)、それにオーブンでこんがり焼いたソーセージ。でも、マーガレットさん夫婦はソーセージは食べません。代わりに大豆のハンバーグを食べていました。

 
 
  肉も魚もあるバラエティ豊かな料理が毎日食卓に並びます。
特に野菜は毎日に欠かしません。その調理法は、スチームをしただけだったり、香り付けにハーブと一緒に炒めただけだったりと、全体的に薄味。サラダのドレッシングも薄味でした。
でもその野菜が、とてもおいしかったんです。野菜本来の甘さがあって。イメージはなかったけどイギリスは農業国。良質な野菜を求める関心も高く、“オーガニック”とついた野菜も店に多く並んでいます。
ゆでるだけ、炒めるだけというシンプルな調理法は、その野菜のおいしさを生かすのにぴったり。
特にマーガレットさん家では減塩に気をつけていて、調理にほとんど塩を使ってませんでした。

そして、このメニューにはもう一つ、大きなポイントがあったんです。

それは、私たちも日本に戻ってからもずっと気がつかなかったこと。知らないうちに私たちのごはんライフに影響を与えていたんです。

<次回へつづく>

 

 3 ワンプレートはじめてみます
 2006年7月17日 (月)
 
 

マーガレットさん家のごはん、もう一つのポイントは、
一枚の皿に全部盛りつけて食べる、ということです。
チキンの日も、フィッシュの日も、サラダの日も。

食事のはじまる前に準備するのは、人数分の皿、それにフォークとナイフだけです。
そしてテーブルの真ん中には、ゆで野菜が入った小鍋が二つに、メインをのせた皿やキャセロールなどが置かれます。

それを大きなスプーンやフォークで各自が自分の皿に取り分けて、ディッシュを完成させるのです。
これはいわゆる“ワンプレートディッシュ”と呼ばれるもの。毎日がこのスタイルでした。
鍋から各自がセルフサービスで自分の皿に取り分けるというのも、マーガレットさん家の食卓の大きなポイント。一人で全員分を取り分けるよりラクだし、自分の責任で食べたい分だけ取ればいいんですから。なんか自由な感じがしました。

ワンプレートディッシュの便利なところは、
何といっても、食べ終わった後の皿洗いがラクチンなこと


先日実家に帰ったときに、私の田舎のじいちゃんのごはんを見てみると、
ごはん茶碗、みそ汁椀、焼魚の四角い皿、おひたしの小鉢、ひじきの小鉢、しょうゆ皿、それにみんなでとって食べるための大皿、その取り皿・・と7、8枚の皿を使っています。
これは皿洗いが大変なわけよね。

ようし、ちょっと変えてみようっと!というわけで、
思い切ってじいちゃんのごはんをワンプレートに盛ってみました。

焼き魚、漬物、おひたし、ひじきなどいつものおかずを一皿に。
ごはんとみそ汁はさすがに別にしましたが、おかずを一皿にまとめることで、
ずいぶん皿の数は減りました。
「西洋ではこうやって食べるんだよ」と説明すると、もの珍しさも手伝ってか、じいちゃんもなかなか気に入った様子。
それまでは、「じいちゃんは必ず一皿は残すんだ」と母が言っていたように、好きなものばかり食べがちだったじいちゃんも、ちゃんとバランスよく食べるようになったんです。
これはいい!
皿の数が減るだけでなく、思いがけない効果がありました。



















  
 
 

わたしたちツキノワ夫婦も、今まで別々の皿に盛っていたのをワンプレートにしてみました。
別に洋食じゃなくても、和食でも中華でも、なんでも絵になるものです。


ソーセージ+ローストポテト+ゆでたインゲン


野菜炒め+パスタ+カレーの残り+ミニメンチ


イワシのみそ煮+白米+きゅうりの塩もみ


麻婆豆腐+白米+大根サラダ+きんぴらの残り

全部一皿にのせてしまえば、残りものだって絵になります。
気張らない感じでできるのが、毎日の食卓に根付く秘訣。ツキノワ流のワンプレートディッシュです!
そして二人だったら皿は2枚で済むんです。後かたづけがラクチンなのはすばらしい!

それに、主食に対する考え方も変わりました。
日本の主食といえば白米。
といっても私たちの主食は、白米よりも主にビールのことが多かったのですが…。
イギリスから帰ってきてからは、その主食にゆでたじゃがいもや、ショートパスタも仲間入りしました。これだと白米よりもビールに合う!
ということもあって、私たち夫婦の食卓では、すっかりワンプレートが活躍しています。

そうして食べているうちに、ワンプレートの本当の実力を発見したんです!
イギリスの人たちがワンプレートにしている理由は、ただ皿洗いをラクにしたいというだけじゃなかったんだ!と気がついたんです!というのは…?

<次回に続く>

 

 4 まぜて食べる。
 2006年7月24日 (月)
 
 

イギリスの人たちがワンプレートにしている理由?それは、ただ皿洗いがラクというだけじゃないんです。
ワンプレートの本当の実力、それは…?
「全部まぜて食べること」
と私たちは発見したんです!

マーガレットさん家でのワンプレートディッシュ、慣れるまでは食べるのに気を遣っていました。
なぜなら、チキンフライだけにソースを掛けたくても、ごはんにもかかってしまう。パスタもサラダも食べているうちに混ざってしまう。いくらお皿が大きくても、一つずつまざらないように食べるのが難しかったんです。
ところが、マーガレットさんたちが食べているのを注意して見ていると、
フライをこまかく切りわけ、それをパスタや野菜と一緒にまぜて食べていたんです。
これは目からウロコ!
そうか、まざらないようにするんじゃなくて、まぜて食べるんだ!逆に!
真似してまぜながら食べてみると、なるほど食べやすいし、味もなんだか深くなる気がする。
ワンプレートにしているのは、最初からまぜて食べるためなんだ!と気づいたのでした。



まぜて食べることは、日本の食卓だとなんだか行儀が悪いような感じがしますよね。子供がごはんとおかずををぐちゃぐちゃにして食べていたら大人は注意するでしょう。
それは、日本のお惣菜は、煮物も炒め物も一皿ずつ味付けが施されていて、それぞれ完成した一品料理になっているからでしょうか。ごはんとおかずを順番に一口ずつ食べるのが、日本の食卓のスタイルですよね。

一方、マーガレットさん家の食卓では家族みんなまぜて食べるのが当たり前。イギリスではそれは行儀の悪い事じゃありません。
にしても、どうしてまぜて食べるんでしょう…?

私たちはこう考えました。
それは、まぜて食べた方がおいしい味付けになっているからじゃない?

マーガレットさん家の食事は、副菜になる野菜類にほとんど塩味がついていません。全体的に塩分は控えめでした。スチームしただけだったり、炒めたものにハーブで香りを付けたものだったり。パスタも胡椒をかけるだけで食卓に上ります。そしてそれを細かく切ったりしてまぜて食べるんです。
ひとつひとつは薄味でも、ワンプレートでまぜて食べると…?
全体の味が一つになって複雑な味わいになるんです。グレービーソースも肉汁のうまみも、野菜のハーブの香りも、全体が一つの料理になっている感じ。
サラダのドレッシングも控えめの味でオイルも少なめでOK。けずったチーズやオリーブと一緒に食べれば、適度な塩っけが加わって十分満足できるんです。かなりの減塩になる上に、食材本来のおいしさを感じることができるというわけ。

これって気づかないけど、けっこう画期的な発見じゃないですか?
私たちは、この「まぜて食べるスタイル」が、イギリス料理と切っても切れない重要なことなんじゃないかと思うんです。

イギリスの料理は、ゆでただけ、焼いただけ、のせただけというシンプルな調理法。日本のお総菜のように一つ一つ完成した味付けではないから、その部分だけを見て「イギリスの料理はおいしくない」と言う人もいるのかもしれません。でもそれはまぜて食べることで、それぞれの味が生きる調理法なんです。
イギリスの人たちがみんなそういう風にワンプレートを捉えているかどうかはわかりません。でも、私たちがイギリスで感じて、日本に帰ってきてからも影響を受けていること、それはこういうことなんです。

このスタイルを取り入れて、私たちの食生活も広がりました。
一つの皿に、ごはんもおかずも、冷蔵庫にあるあれこれの野菜ものせてみたり。これはちょっとという組み合わせでも、のせてみると意外な味の変化を発見したり。レシピもなく、料理名もないけれど、毎日の食卓がより楽しくなりました。



それはごはんやパスタだけじゃなく、麺類にも広がりました。
麺類にもワンプレートの法則が成り立ちます。

私たちの間では特に、冷やし中華にいろいろのせて食べるのがこの夏のブーム。
以前はキュウリ・ハム・薄焼き卵と決まっていましたが、今はあるものなんでも。野菜はタマネギや水菜でもいいし、ハムじゃなくてもシーチキンや天ぷらだったり、前の日の炒めものや煮物の残りなんかも、なんでも麺の上にのせて食べています。栄養のバランスもよくなるし、野菜もたくさん食べられるし、上にのせるものが違えば毎日冷やし中華でも気になりません。

はじめの頃は、イギリスの食文化をとりいれることは、紫タマネギや芽キャベツといったイギリス風の食材を使うことだと思っていました。
しかし、今では?
冷やし中華になんでものせて食べるようになったこと、いってみればこれが私たちなりにイギリスの食文化をとりいれたカタチです。

これってけっこう深いですよね(?)


<野菜のあるワンプレート生活:完>

※7月号で予定していた他の特集「街角で見つけたオーガニックライフ」 「ブルワリーのスローフード計画」は、時間的に厳しいため次号以降にもちこすことにします。ご了承ください。

 




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