ガネッシュ岩絵のほかに、パキスタン北部地域にはチラスの岩絵があります。チラスの岩絵には、仏像が描かれています。パキスタンの国教イスラム教では、偶像崇拝を禁止しています。 仏像が刻まれているチラスの岩絵は、仏教がシルクロードを渡って伝えられたことを思い起こさせます。

上の写真の一部を拡大しました。左から仏像の絵、スツーパ(塔、墓)の絵、そしてその右にも2体の仏像が見えます。

パミール高原11日間によれば、チラスの岩絵は、仏教が盛んだった頃、5~6世紀の頃のもので、アイベックスを襲う狼や古い文字なども書かれているそうです。そして、最初の写真にも写っていますが、白ペンキで書かれた文字については、「岩絵の存在でも知らせるものかと思ったら、選挙運動の文句とのこと」とありました。また、「(大唐西域記には)このあたりがすごい難所であったという記載がある」とも書いてありました。(参照パミール高原11日間)
現在でも、ギルギットからクンジャラブ峠までのカラコルムハイウェーは、落石やがけ崩れなどが頻繁に起こっています。かつてのシルクロードを行き来する多くの人たちにとって、チラスは、ほっと一休みできる場所であり、その地に残された仏像の岩絵は、命を落とした旅人への鎮魂の祈りを含んで描かれたのだと思います。チラスの岩絵は、現在でも、カラコルムハイウェーを移動する人々にとって、過ぎ去った歴史ではないのかもしれません。
(写真/文・山本質素)